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上尾保育所熱中症事故事件の判決が確定しました。 [保育について]

昨日、2009年12月31日をもって、
上尾保育所での熱中症死亡事故事件の判決が確定しました。

マスコミでは余り取り上げられませんでしたが、
判決は、上尾市立という公立保育所での死亡事故について、
公務員である担任保育士らの「重大な過失」を認定しました。

これは、私たち弁護士にとっては、衝撃的な判決です。

公務員は、国家賠償法という法律によって、
公務を行う上で、通常の過失によって、他人に損害を与えても、
国又は地方公共団体が賠償責任を負うのであって、
公務員個人は責任を負わないこととされています。
例外的に、
公務員個人に「故意又は重大な過失」があったときに、
国又は地方公共団体が公務員個人に求償権を有するに止まります。

そして、ここに公務員個人が賠償責任の求償義務を負う、
「重大な過失」とは、昭和30年代の古い最高裁判決によって、
「故意に近い」著しい程度のものに限定されていました。

民間の保育所だったら、私立学校だったら、
担任保育士や担任教師の過失の程度が重ければ、
当然、保育所や学校の設置者とともに、担任も個人責任を負います。
なのに、設置主体が公立だと言うだけで、
何故、子どもの死亡について過失のある担任が免責されるのか。
全く理解しがたい法律です。
私自身、公務員個人を被告にして、部分敗訴した経験があります。

ところが、今回の判決は、
一般に、保育士は、子ども一人一人を見て、その関係性も把握し、
子どもたちの動静を常に把握しなければならないこと、
担任同士の連携をしなければならないこと、
担任以外も、保育所全体で取り組まなければならないことなど、
まともな保育の水準を提示し、
その後、上尾保育所でのあまりにもでたらめな保育の状況を詳細に判示して、
「一般的に保育士に求められるべき注意義務の基準に照らして」、
悪質、重大な過失ありと断定しています。

更に、亡くなったV君の両親が、V君との関係性を憂慮し、
担任保育士に目配りを求めていたA君。
本件事故当日、A君とともにV君が保育室を出て行ったのに、
担任保育士はV君の両親の訴えを「一顧だにせず」注意すべきを怠ったばかりか、
担任保育士が数日前から大人の目を避けていると感じていたA君への配慮から、
敢えて、様子を見に行かないでいたことは、「強い非難を免がれない」と指弾しています。


この判決は、前記の古い最高裁判例の基準を本件に当てはめていません。
本来求められる注意義務のレベルと注意義務違反の程度を比較し、
かつ、
注意義務設定においては、その分野の専門家であることを踏まえています。
要するに、
「故意に近い」という、重過失認定を否定する方向で働きやすい基準ではなく、
為すべき義務と為した行為の乖離の大きさに焦点を当てるという、
新たな判断基準を示したのだと考えられます。
この基準は、これは酷い(過失が大きい)→重過失認定となるので、
重過失が認められやすくなる道を開いたという意味で、
画期的な意味があるのではないかと思っています。(自画自賛)

これは、前記の最高裁判例の射程を超えるものとも言えるので、
判例違背で控訴される可能性もあったと思いますが、
控訴されるリスクを負っても、基準を緩めて、重過失を認めたいと
裁判所も思ってくれた、ということでしょう。

12月30日までの控訴期限内に、上尾市は控訴しませんでした。

1時間以上もV君の動静把握を怠っていた担任保育士らは、
上尾市なり、自治体賠償責任保険の保険会社なりから、
損害賠償金の求償を受けることになると思われます。

民間であれば当たり前のことですが、
公務員の身分保障という地位にあぐらをかいて、
自らの職責を自覚せずに放任保育をしてきた上尾保育所の保育士たちに、
この判決をしっかりと噛みしめてもらいたいと思います。





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